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無様式感覚と共感覚

2022.08.09
  • 最新の知識

無様式知覚と共感覚

赤ちゃんは、視覚、聴覚、触覚、嗅覚など、

その各々の感覚器を通して、

刺激を知覚するのではないといわれてます。

では、どういう風に刺激を感じているかというと、

どの感覚器からであっても、

刺激を強弱やリズムなどして捉え、

その刺激を意味づけるといわれてます。

 その刺激から感じる「ニュアンス」を

感じ取って、その刺激を理解するとでも言っていいでしょうか?

このような感覚に囚われない刺激の受け取り方を、

「無様式知覚」といいます。

3か月頃までの乳児は、この無様式知覚の世界に

いると言われてます。

その後脳は発達し、それぞれの感覚器官が働くようになり、

コミュニケーションも旺盛に周囲の大人と取ることが

出来るようになります。

また、人は言葉を駆使するようになると、

無様式知覚は影を潜めていきます。

それぞれの感覚器からの知覚を通して、

刺激を知覚・認知していくようになるのです。

赤ちゃんの無様式知覚と

根底では繋がっていると思われるのですが、

共感覚という感覚もあります。


共感覚とは、赤ちゃんはひとつの感覚(例えば触覚)で

得た情報を、

他の感覚(例えば視覚)の情報として

捉えることが出来る感覚です。

 例として、赤ちゃんが口で得た触覚の情報を

視覚情報として捉えている事例を紹介

します。メルツォフら(Meltzoff & Borton, 1979が

行った実験です。

実験では、生後1ヶ月の赤ちゃんに、

表面がツルツルとしたおしゃぶりと、

ボコボコとしたおしゃぶりのどちらかを

「見せずに」咥えさせます。

その後、赤ちゃんに2つのおしゃぶりを見せてみると、

多くの赤ちゃんが自分が

咥えていた方のおしゃぶり注視するのです。
赤ちゃんは口で得た触覚情報から視覚情報を得ており、
2種類の感覚を共有することができているとわかったのです。

 「共感覚」は「色が聞こえたり」

「音が匂ったり」するという感覚です。

この共感覚はなぜ起こるのか?

一つ原因としてあげられているのは

脳のシナプスの刈り込み不足説です。

赤ちゃんの脳のシナプスという伝達するシステムは

3~6か月に増大し、

以降、必要な情報をおこる配線が強化され、

不必要な配線は「刈り込まれるよう」になります。

脳の最適化が進むのです。

脳が効率的に働くためにはこの刈り込みは大切なプロセスです。

生後3カ月は無様式知覚で、

感覚器官同士が結合しているのですが、

各感覚器官が成長発達とともに発達するために、

それぞれ独立的に働くようになる。

つまり感覚同士の結合が必要でなくなる。

しかし、刈り込みが不足すると、

本来、なくなるはずの感覚同時の結びつきが、

残存してしまい、

結果的にそれぞれの感覚の結びつけが

「共感覚」を生むという説。

もう一つは、抑制不足説です。

干渉しあうべきではない感覚刺激が、抑制されなくて、

別の感覚経路に刺激があふれてしまう結果、

「共感覚」という感覚に至るという説です。

話が少しそれますが、

シナプス刈り込み不足説に関していうと、

自閉症スペクトラムのある方も、

このシナプス刈り込みが不足しているという

報告がされています。

ノースカロライナ大学チャペルヒル校の

ヘザー・コーディ・ハズレット(Heather Cody Hazlett)らは、

24カ月時に自閉症スペクトラムの診断を受けた方の81%に、

出生後6-12ヶ月の時点で、

脳の皮質成長率の増大がすでに認められたと報告しています。

実際、共感覚を持つ自閉症スペクトラムの方もいると思われ、

シナプスの刈り込み不足、「共感覚」、「自閉症スペクトラム」の認知特性には関係があるのかもしれません。

自閉症スペクトラムの特徴に感覚過敏というのがあります。

最近は、速い動きや大きな声を感じると

他の嫌な感覚が生起するなどの報告があり、

これらの報告と共感覚の世界に共通点を感じます。

ちょっと、難しくなりましたね。

共感覚を持つ方は10万人に1人と言われていましたが、

現在は23人に1人と言われています。

私は「共感覚」的な経験をしたことはあまりないわけですが、

実際、そのような感覚を経験をしている方が

いるのは事実です。

皆さんの周りにもいるかも知れません。

自分にはない感覚を「うそー」「ふざけないで」と

対応せずに、

自分と違う感性を「そうなんだ」

「不思議だね」「ねえ、ねえ、どんな感じ?」と

興味を持って、追体験する。

感覚過敏から来る嫌悪感に襲われているようなら、

気分が改善するように協力する。

無様式知覚や共感覚のある人と接するときに、

私達に望まれる行動はこういうものだと思います

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